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『図書館に訊け!』 に訊け! (2005年9月20日)

このコラムを読んでいるあなた。あなたは図書館の使い方を知っていますか?南北朝時代について調べるのに、WebOPAC のタイトル検索ボックスで 「日本の歴史」 というキーワードで検索してヒットした図書を片っ端から読んだりしていませんか? レファレンスライブラリアンに何か質問をしたことがありますか? オンラインデータベースで世界中の英文新聞がほとんど検索できるし全文で読めることを知っていましたか? 特定分野について書かれた図書や雑誌記事・論文を調べる書誌や索引と呼ばれるツールがあることを知っていますか? 百科事典は必ず索引(インデックス)から使うことを知っていましたか? 芋づる式情報探索方法とは何を意味しているか分かりますか?

『図書館に訊け』(ちくま新書486)井上真琴/著 (筑摩書房 2004) を読めば、これらを含む、大学図書館の利用法について一通りのことに習熟できる。近頃の学生諸君は書籍にお金を使わなくなっているとか。ただでさえ狭い部屋で、本棚に余分なスペースを割きたくない。どうせ買ったところで何度も読み直す本は少ないし、それらを BOOK OFF に持って行くのもかったるい。あー、そうですか。そうですか。つまらなくって二度と読まない本、難しすぎて読みこなせない本。確かにそういう本も多いでしょう。しかし、当コラムの著者は自信を持って断言できます。「この本は買うに値する」と。

図書館の使い方がよく分からないのは、諸君の怠慢のせいだけではありません。日本の高等学校で一体何%の人が 「日本十進分類法」 や 「件名」 や 「書誌・索引」 や 「レファレンスサービス」 について、体系立てて教えられた経験を持っているというんだい? 図書館を使いこなすことは高等教育機関における学習・研究に必要不可欠な技術であるにもかかわらず、この国では誰も筋道立てて教えてはくれないのだ。知る人ぞ知る世界なのだ。一握りの研究者が関係者だけに口述伝承するカバラのような秘儀なのだ。

インターネット花盛りの今、前コラムでも書いたように出版事業そのものの根底が問われる時代に突入している。でも 「紙かデジタルか」 の議論以前に、情報を探索するという行為、学問・研究するという姿勢が問われるべきだし、それなしに展開するメディア議論は不毛。その事に気づかせてくれる点でも本書はグレートな存在だ。

今、大学図書館員には今までのどの時代にも比して「利用者教育」が求められている。でも一体どうやって利用者を教育するんだろうか? OPACの使い方を教える? オンラインデータベースを教える? 図書館の仕組みやサービス、機能について、利用者は教育されることを望んでいるんだろうか? おそらく利用者は教育されるのではなくって 「学習したい」 と思っている。または潜在的にその機会を待っている。トップダウン的なノウハウの伝達じゃなくて、今自分が直面している課題、現在のニーズに沿って、能動的に体得する機会を与えられなければ、図書館の本当のありがたみ、その果てにある研究する喜びまではとても導けるものではないと思う。

『図書館に訊け!』 の最終章のタイトルは 「図書館をよくすること、限界を知ること」 となっている。以下一部分を引用する

― 最後に皮肉なことをいうが、図書館利用で得られる情報など結局は研究の前段階レベルに過ぎないことを心得ておいてほしい。―

そう。当たり前のようだが、図書館で得られるのは他人の発信した情報に過ぎない。本当に価値のあるのは自分しか発信できない情報を発信する事だ。昨今、インターネットで大人気のブログにしても、多くは他からの引用ばかりで成り立っているではないか。そんなどこにでも転がっている情報を読んで喜んでいてはダメだな。あなた自身しか発信できないローカルな情報にこそ価値がある。そのためには他人の書いたものから得られる情報の蓄積だけではなく、それらの融合、自身の経験から加わる思考が最も重要だ。一人一人がもともと 「世界に一つだけの花」 と言ってしまえば響きはいいが、学術・研究の世界では、そのような甘えは許されない。他人の受け売りをしている限り、やはりどこにでもある花でしかない。

学究の徒として本当に花を咲かせたい人は、まずこの本を読んでほしい。図書館の持つポテンシャルを存分に引き出すためにも。そしてその先の新しい地平に乗り出すためにも。740円でこれからの大学生活(ひょっとすると人生)が変わるとしたら、安い買い物だと思うよ。ホント。

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